1-3. SASの基本的な操作

SASのウィンドウ

SASを起動すると次のようなウィンドウが表示されます。

製品版SAS

図1-3
図1-3. 製品版SASのウィンドウ

ウィンドウ左側にSASのリソースにアクセスするためのペインがあります。右側のペインには『エディタ』『ログ』『アウトプット』という3つのウィンドウがあり、それぞれSASプログラムを入力し、実行したログと結果が出力されるウィンドウです。ただし、現在のSASはデフォルトではアウトプットウィンドウには結果は表示されず『結果ビューア』というウィンドウが開いてHTML形式で結果が表示されるようになっています。設定を変更することでアウトプットウィンドウに結果を表示することもできて、アウトプットウィンドウにはテキストベースで結果が表示されます。

SAS OnDemand for Academics

図1-2
図1-2. SAS Studioのウィンドウ

SAS ODAではブラウザ上で動作するSAS Studioというインターフェースを通してSASサーバーにアクセスしてSASを利用します。SAS Studioもウィンドウ左側にSASの様々なリソースにアクセスするペインがあります。まずはもっとも多く参照するのが『サーバーファイルとフォルダ』でしょう。『サーバーファイルとフォルダ』にはSASサーバー上のフォルダとファイルが表示されます。その他に『タスクとユーティリティ』『スニペット』などもあり、必要に応じて利用していくことになります。

ウィンドウ右側はSASプログラムを入力し、実行した結果が表示されるペインです。『プログラム1』タブがあり、更にその下に『コード』『ログ』『結果』のページを切り替えるタブがあります。『コード』ページにSASプログラムを書いていきます。『ログ』ページにはSASプログラムを実行した際の様々なメッセージが表示されます。『結果』ページにはコードを実行した結果が表示されます。『プログラム』タブはいくつも追加することができて、それぞれに『コード』『ログ』『結果』のページがあります。SASプログラムを実行すると、そのプログラムが書かれた『コード』ページに対応する『ログ』および『結果』ページにそれぞれログと結果が出力されます。

以降では、基本的に製品版SASに沿って解説を行いますので、ウィンドウ名などは適宜読み替えてください。

SASのプログラム実行

まずはSASの動作を見てみるために簡単なプログラムを実行してみます。Sample 1-1をエディタに入力します。ここではまだ内容を理解する必要はありません。

【Sample 1-1】

/* Sample 1-1 */

data ds11; * サンプルデータセットの作成 ;
  input	id name $ sex grade $
  height weight1 weight2 father;
datalines;
1  AIZAWA     2 C 159.5 53.3 55.5 168.6
2  KONNO      2 B 149.6 63.5 65.6 151.1
3  YAMAZAKI   1 C 177.5 73.0 71.6 168.0
4  NAKAMURA   2 B 160.3 64.5 66.5 162.8
5  HARASHIMA  1 C 170.0 80.0 78.7 158.5
6  SHINODA    1 B 174.3 73.5 71.9 159.8
7  ITO        1 A 169.2 56.3 55.3 163.2
8  SASAKI     1 B 167.7 59.0 57.2 162.0
9  MAEDA      1 B 165.9 53.6 52.3 162.5
10 ITO        2 A 150.0 43.5 45.1 167.0
11 OGAWA      1 C 160.9 48.8 47.4 161.0
12 KATO       1 A 164.3 76.0 74.8 160.6
13 OZAWA      2 B 159.8 67.9 69.5 168.7
14 TANAKA     2 C 160.4 53.0 54.6 164.6
15 UCHIDA     2 B 155.4 56.2 57.6 156.6
16 MATSUSHITA 2 C 155.6 60.3 61.9 171.5
17 SAKAMOTO   2 C 163.4 51.0 52.8 167.5
18 UTSUMI     2 B 165.0 58.8 61.1 151.2
19 SUGITA     2 C 159.1 46.9 48.6 161.0
20 KOBORI     1 A 171.4 77.3 75.6 155.0
;
run;

/* データセットを表示する */
proc print data=ds11;
run;

/* データセットを性別でソートする */
proc sort data=ds11;
  by sex;
run;

/* 男女別に相関係数を算出 */
proc corr data=ds11;
  var height weight1 father;
  by sex;
run;

プログラムを入力したら実行してみます。プログラムを実行することを「サブミットする」と言います。
 製品版SASの場合サブミットは、(1) 『サブミット』ボタンをクリックする、(2) [F8]キーを押下する、(3) メニューの[実行]から[サブミット]を選択する、のいずれかでできます。

SAS Studioの場合は、(1) 『サブミット』ボタンをクリックする、(2) [F3]キーを押下する、のいずれかでできます。

エディタで何処も選択されていない状態でサブミットすると入力されているプログラム全体が実行されますが、一部を選択してサブミットすると選択した部分だけを実行させることができます。

実行したプログラムが問題なく実行できた場合は、自動的に結果ビューアウィンドウまたはアウトプットウィンドウにフォーカスが移り、結果が表示されます。プログラムを実行した結果が結果ビューアウィンドウまたはアウトプットウィンドウに、実行時の様々なメッセージ(Note, Warning, Error, etc.)がログウィンドウに表示されていることを確認してください。

図1-4
図1-4. Sample 1-1 をサブミットした後の結果ビューアウィンドウ
図1-5
図1-5. Sample 1-1 をサブミットした後のログウィンドウ

このように、SASで分析を行うというのは、プログラムを書いて実行(サブミット)し、出力された結果を見る、というもので、操作自体は非常に簡単です。問題は、目的とする結果を得るために、プログラムをどのように書けばよいか?ということになります。次からはこのSASのプログラムについて学んでいきます。

SASの文(ステートメント)

上の例のようにSASのプログラムは命令を記述する一連の命令文から成ります。この命令文をSASステートメントと呼び、SASはこれらのSASステートメントを順に解釈して実行していきます。SASステートメントは ;(セミコロン)で終了します。つまり、セミコロンで区切られた範囲が一つのSASステートメントということになります。SASステートメントを記述するキーワードのデリミタ(区切り文字)は半角スペースを用いますが、これはいくつあっても構いませんし、一つのキーワードの途中でなければ改行しても構いません。全角のスペースはデリミタとして認識されませんので注意してください。またSASのプログラムでは文字定数 を除いて大文字と小文字は区別されません。

※ 文字定数: '(シングルクォート)や "(ダブルクォート)で括られた文字列

SASのコメント

/* と */ で挟まれた部分はコメントとして扱われ、SASプログラムの実行においては無視されます。コメントはDATALINESステートメント(後述)によるデータ行以外の任意の場所に置くことが出来ます。

また *(アスタリスク)で始まるステートメントもコメントと見なされます。

エディタではコメントと認識された部分は文字色が緑色で表示されます。

SASプログラムの保存

入力したプログラムはSASを終了すると消えてしまいます。作成したプログラムはテキストファイルとして保存しておくことで、後で呼び出すことができます。エディタをアクティブにした状態で『上書き保存』ボタンをクリックするか、メニューの[ファイル]から[上書き保存]か[名前を付けて保存]を選択して保存します。拡張子は自動的に .sas になります。Sample 1-1 は sample1-1.sas としてSASチュートリアルフォルダに保存しておきます。


SAS ODAの場合、SAS本体はサーバー上で動いているため、ローカルのフォルダに直接アクセスすることはできません。SASで扱うすべてのファイルはSASサーバー上に保存します。例えばホームフォルダの下に『tutorial』というサブフォルダを作成して、そこにファイルを保存するには次のようにします。

左側ペインの『ファイル(ホーム)』を選択した状態で『新規』ボタンをクリックして、出てきたメニューの『フォルダ』を選択します。フォルダの名前を入力して保存をクリックするとサブフォルダが作成されます。このサブフォルダの中に、『プログラムの保存』ボタンをクリックしてプログラムを保存します。

図1-6
図1-6. SAS Studioでのファイルの保存

次節からはSASプログラムの2大要素である、DATAステップとPROCステップについて順に解説していきます。