1-1. はじめに

SASは統計分析ソフトとしてトップクラスの機能を持っており、その信頼性も世界的に認められています。しかし製品版のSASは非常に高価で、実際にSASを利用できる環境は限られていました。しかし SAS OnDemand for Academics (SAS ODA) が公開されたことにより、教育・学術研究・学習といった非商用目的の利用であれば誰でもSASを利用することができるようになりました。無償版とはいえ、SAS ODAは、Base SAS、SAS/STAT、SAS/IML、SAS/ETSといったSASの中核的機能をすべて利用することができます。これを使わない手はありません。

SASは基本的にプログラムを書いて使います。これが初心者にとってはとっつきにくく、SASを難しいと感じさせる要因のひとつになっているようです。確かに、メニューから項目を選択していってマウス操作だけで扱えるソフトに比べると、SASプログラムの文法を覚えねばならず、最初は難しく感じるでしょう。また、SASのプログラムの書き方について解りやすく書かれている成書が少ないこともSASの敷居を高くしている原因として挙げられます。しかし決してSASのプログラムを書くのは難しいことではなく、単に慣れの問題です。そして、一旦慣れてしまえばプログラムを書く方が、マウスを使って操作するよりもずっと効率的に作業できるようになります。

本チュートリアルでは、どのようにプログラムを書いてSASを使うか、を順を追って解説していきます。チュートリアルでは基本的に製品版で解説をします。製品版とODAはユーザーインターフェースが異なるため操作性に違いがありますが、基本的な構造は一緒なので、ODAを使う場合でもそれほど分かりにくくはないでしょう。また、ODAは外部ファイルをサーバー上に置いて利用するため、外部ファイルの参照の仕方が、PCで使用する場合と異なります。その点を除けば、SASプログラムの書き方は同じです。SASプログラムの書き方を覚えればどちらでも使えるようになります。

SAS OnDemand for Academicsの利用

SAS OnDemand for Academicsを利用するにはまずSAS社のホームページでSASのユーザーアカウントであるSAS Profileを作成します。次にSAS OnDemand for Academicsにアクセスして、SAS Profileでサインインします。初回はSAS ODAの利用登録手続きが必要で、登録が済めばダッシュボードが表示されてSAS ODAが利用できるようになります。教育用のコースを登録するとEnterprise Guideなどのビジュアルインターフェースも利用できるようですが、基本はSAS Studioを利用します。ダッシュボードのApplicationタブでSAS StudioをクリックするとSAS Studioが起動します。SASサーバー上には5GBのファイル保存スペースが割り当てられます。